催眠でよくある誤解についてお話ししましょう。
Q
催眠でものを忘れさせたり、嫌な記憶を取り除くことはできますか?
A
被験性の高い人には、催眠中はできても覚醒後は元に戻ります。
おもしろいことに、催眠中は、思い出すことができない人と、頭の中でははっきり思い出してもそれを口にすることができない人など、いろいろな「思い出せない」バージョンが存在するようです。
これはその人の特性によるともと考えられます。
ただし、永遠に思い出せないようにするとか、記憶を取り去るということは不可能です。
そんなことができるなら、すでに病院でもやっているでしょう。
誰だって忘れてしまいたいことを簡単に「呪文」を唱えてなくしたいと思っているではないですか。
でも、そんなことが広まっていない事実が、答えを物語っています。
Q
前世を見ることはできるのですか。
A
キリスト教やイスラム教、ユダヤ教など世界の多くの宗教には、輪廻転生の考えはありません。
ヒンズー教や現代の仏教などで見られる考え方です。
つまりは、信仰と密接に関係しているのです。
それを信じるものには事実でしょうし、信じないものにとっては事実でない、ということです。
信仰でのお話ですから、前世がある、ないと論争するのは無益です。
いろいろな症状を軽減するために、催眠中に、前世があると信じている人のその信念を利用して、リフレーミングなどの手法によって改善を図ることは可能でしょう。
Q
催眠によって、人を好きにさせたりすることはできますか。
A
催眠中は、被験性の高い人に対してはできます。
覚めると、元に戻ります。
ただし、私の実験によると、特に被験性の高い人に対して、何度も何度もこの催眠を誘導しては覚醒を繰り返せば、「好きである」という気持ちが生成されやすくなるようです。
Q
催眠によって、その人の道徳に反すること、たとえば殺人はできますか。
A
原則はできません。
たとえば、直接暗示として「目の前の人を殺しなさい」といってもそうしません。
けれど、自分の命が脅かされるため、命を守るために・・・など間接暗示を駆使すると可能となるかもしれません。
そして、それには催眠は必ずしも必要はありません。
覚醒時においても、その人のビリーフ(信念、道徳観、価値観など)を変容させることによって可能となるからです。
たとえばカルトでの殺人や詐欺、自爆テロなどをみても、それは可能であることが容易に分かるでしょう。
このように見ても、催眠は万能でないことは分かるでしょう?
催眠療法を謳っているところでも、催眠そのもので人は改善しないのです。
催眠中では、心理療法がかなりやりやすくなるため、心理療法をする道具として催眠が使われるのです。
催眠で有名な精神科医エリクソンも、催眠で治療したのではなく、トランスに誘導し、そこで心理療法を行ったのです。
催眠は麻酔であって、麻酔そのものでは治療はできません。
麻酔をして、オペをして、初めて治療ができるのです。
その意味で、催眠療法といっても、療法家が、どんな心理療法をするのかが大切であって、催眠が大切であるのではないのです。
最近は、催眠ができるというだけで、さまざまな症状を改善するという人が多いですが、その療法家がどんな心理療法をするのか、それを見極めることが「本物」と「に・せ・も・の」を見分ける目だと思います。
