ニーバーの祈り

th (24)

アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーの詩

『変えることができるものについて、それを変えるだけの勇気を我らに与えたまえ。

変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものと、識別する知恵を与えたまえ。』

というものがあります。

この詩は、ニーバーの祈りともいわれ、薬物依存症や神経症の克服を支援するプログラム「12段階のプログラム」Twelve-Step programによって採用され、広く知られるようになったものです。

この詩には、非常に重要なことが書かれてあります。

それは、人が苦悩にもがいてる多くの場合、実は、変えることができないものを変えようとしている、ということです。

変えることができないものは、どう頑張っても変えることができないのです。

例えば、すでに起きてしまった現実について、いくらそれを思考で否定しようとも現実は否定できません。

ある人から、悪口を言われたとしましょう。

あなたはその悪口を聞いて腹が立ちます。

どうして腹が立ったのか、思考の中を覗いてみると、

人は私の悪口を言うべきではない

というマイルールが頭の中に存在してることがわかると思います。

このマイルールというのは前回も述べたように、

ねばならない
してはいけない
べきである
べきでない

などに代表される「べき思考」から成り立っています。

このマイルールが破られると、腹が立ちます。

では、

人は私の悪口を言うべきではない

これは本当に正しいことでしょうか。

もし、これが正しいとすれば、あなたはその人になり代わって、その人が何を言うべきか、何をすべきか、何を考えるべきかについてすべてを支配することが出来るということになります。

こんなことは事実上、不可能なことなのです。

あなたが頭の中で、どんなマイルールを持っていたとしても、他人が何をするか、何を考えるか、何を言うかは他人の自由です。

つまり、あなたの頭の中のマイルールで他人を支配できないのです

人はあなたの意思とは関係なく、行動し、思考し、感情を持つのです。

他人があなたの悪口を言ってしまったとき、すでに悪口を言ってしまった現実があるわけですから、それを、「悪口を言うべきでない」と否定しても全く意味がないことです。

あなたの悪口を言ってしまったという現実を、マイルールである「べきでない」という思考でいくら否定しても現実を否定することはできません。

これはすでに起きてしまった変えることができないものを、思考のみで否定(変えよう)しようとすることです。

変えることができないものを、変えようとするとき、必ず苦悩があります。

私は、ずっと以前から言い続けているのですが、思考や感情はコントロールはできません。

コントロールできないもの、つまり変えることができないものを、コントロールしようとするとき、そこには苦悩が発生します。

ではどうすればいいのか、

ニーバーの祈りのように、変えることができないものを変えようとせず、ありのままその現実を受け入れるということです。

思考や感情は、放っておいても発生するものです。
それらと戦おうとすればするほど、それらを忘れようとすればするほど、ますますとらわれるものについては、発生しては消えてゆく単なる思考や感情としてそれをそのまま受け入れるということです。

あなたが何かに腹が立つとき、あるいはイライラする時、変えることができないものを変えようとしていないかどうか、一歩退いてみてみたらどうでしょうか。

変えることができるものについては、それを変える勇気を持ちましょう。
変えることができないものについては、受け入れる冷静さを持ちましょう。

何よりも、変えることができるものとできないものをしっかりと見極めましょう。

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